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少ない緑と通路の計画

かつて小規模の区画整理の設計競技に参加したことがありました。区画は市の中心部に近い住宅地の一角です。鬱蒼とした林でもありました。そこに区画と公園を作るのですが、コンペは公園の設計に絞られていました。審査は県から専門家が呼ばれていました。

参加した方の案も「木」をテーマとした公園が殆どでした。私もそうしたのですが、樹木はイチョウとクスノキの2本しか植えませんでした。

地権者としての市はともかく、元々土地を持って住んでいた人達がもっとも困っていたのは樹木の管理だと思ったからです。

年によって、クスノキが紅葉してオレンジになるのか先だったり、イチョウが薄い緑の新芽を付けるのが先だったり、2本であっても長年見ていると変化を感じ取ることができます。

私の元々の持論ですが、公園の樹木は煩雑で剪定など管理に毎年金が掛かります。其々にプレートを付けて樹木の種類を知ってもらおうとしてもなかなか覚えてくれるものでもありません。何故なら煩雑に植え過ぎてゴチャゴチャし過ぎているからです。この2本を対比して見たときの状況を言葉にすれば、相手にも想像しやすく、居ながらにして自分の状況も表現しやすくなり、手紙の季節の挨拶になります。おかげさまで優勝を頂き、実際の設計に参加させていただきました。

当時はバイナルフェンスそのものが日本にありませんでしたが、これを使いこなせば、コンペの時と同様、少ない樹木又は低木で充分綺麗な緑とそんな変化を感じ取れる庭が実現すると確信しました。

また、庭に行くのに家の脇の長い通路(犬走り)を通らないといけないことがよくありますが、当計画では通路の先にバイナルで「鉢置き台」を作り、「あれは何だろう」と気にさせる事で通路を歩く時にも楽しさを与えるようにしてみました。普通なら砂利でも敷いて終わるところです。

ちょっとした「的を得た工夫」になったのではないかと思っています。