日本に来た外国の人には日本の住宅がチープに写るようです。そう聞くと日本は土地が高く敷地が狭いからと言い訳する日本人は多いのですが、実はそうではありません。アメリカに限らず他の国でも狭い敷地に立つ住宅を沢山見て来ました。彼らの言う「チープ」とは、どういう意味なのでしょう。
例えば窓の枠。世界的に見ると木と鉄が主流ですが日本はアルミ。アルミを建具に使った国は日本とニュージーランドくらいのものです。そのニュージーランドでは全て注文に応じて個別に製造します。肉厚は厚く、カラーも多くから選べ、重さも日本のサッシとは比べ物になりません。工場で作るのは同じですが原料のボーキサイトが取れる国と違い、日本の場合は高い運賃を払って輸入しないといけません。ボーキサイトからアルミナを抽出し、電気分解してアルミニウムの地金を作り、それを輸入しています。大黒ふ頭に行けば沢山の倉庫に置いていたりします。それを更に高い運搬費を掛けて富山の工場に運び、アルミサッシは作られます。何度か訪問し見学したことがありますがサッシメーカーがいくつもあり、広さを競っているかのようでした。問題は稼働率です。少し景気が落ちれば稼働率は20% 近くにすぐ落ち込みます。通常でも50% 超えていないのではないかと思いました。それを補うようにサッシメーカーが目をつけたのがエクステリア製品であり、アルミ製のフェンスはこうした事情を背景にして生まれて来たのです。採算する商品の肉厚も最低限を追求した厚みを感じないのもので出来ています。
更に日本のハウスメーカー。これは自社の工場で生産した外壁材や屋根の破風、軒樋、などの部材や提携して作らせたキッチンセット、床のフローリング、階段材などをセットにして47 都道府県にある工務店に権利を売り、ハウスメーカーのブランドで住宅供給事業を行う企業です。37 万平方km の国土の中に1 億2 千万人が暮らす人口密度の高い日本だからこそ成立している形態で、アメリカには基本的にはありません。一口に47 都道府県と言っても大変な距離であり、カバーするには運搬費が莫大に掛かっています。まだ一括して送れるなら良い方ですが、メンテナンスで1 ケや2 ケの製品を運ぶとなるとロスは大変です。ですからメーカーは仕様を定め、これから外れる顧客の要望は基本的に受け付けません。これでは家づくりは誰の為にあるのか本末を転倒してしまっています。
こうして全国どこに行っても同じような外観をした住宅と外構によるランドスケープは出来上がってしまいました。言い換えると、作りが華奢で線が細く、どの家も同じようであり、金属を使った工場生産された肉厚のない部材の集積された家と外部の作りで出来ています。それに道路の狭さと電柱や張り巡らされた電線が加わり、その景観を見て「チープだ」と感じるのです。バイナル製品のサイズは材木を真似て作ったものですから肉厚のある線の太い外部空間が出来上がります。日本ではアルミや鉄の工場生産されたフェンスが主流に思えてしまいますが、どちらが普通の感覚がご理解いただければ幸いです。